繋いだ手
土に呑めって、歩きにくい。


一歩一歩、

確かめようがない中、

踏み出す位置を慎重に、

且つ、


恐い素振りを絶対に見せずに


この暗闇の中で、善の歩幅に置いてきぼりにならないようには


難しかった。


ぁたしのミュールが、2.3歩先行く、

善を、追い掛けようと、


ゆっくり一生懸命だった。        


先行く善が、

振り返り、イタズラに問う。


「理央さん?ビビリ?」



「は?なにが?

違うし!ぬかるみだから、キョドッたの」



かわいぶって、恐がるのはいや。


こういう時に女の子なのは、好きじゃない。



違う。ハスキーな声と

姉さんキャラを


みんなのイメージを壊したくないから、あたしは、


こういう時、必死に取り繕う癖が出来ている。



本当は、めっちゃ甘えん坊だし、


怖がりで泣き虫なあたし。


だから、ここでもあたしは、いつものサバサバ加減に増して、平気を装った。


それでも、あの暗闇はさすがに


男でも、やべぇっマヂっっ。って思うのが普通だろうから、



善は、必要以上に平気ぶる

あたしを見透かしてるみたいだ。



笑い声が、前から聞こえた。


松の木のトンネルを抜け、その先にある、堤防を越えると、



そこには、高波と星空が、一体化し、それを円く、囲むように、工場が立ち並び


その隙間からは、郊外の灯りが、キラキラと溢れ出ている。



あたしは、少し、明るくなった空気に安心し、


さっきの笑い声を追い抜いて、


勢い良く、駆け出した。


笑ったおかえしに、先に堤防までゴールしてやる。
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