繋いだ手
子供のようにはしゃぐ善は、

さっきのソレとは、

全くの別人のようだった。


その姿を見ながら、

あたしは、
さっきの善の話をまだ、
ぐるぐる考えていた。

また今度、その話の続きをしよう…。



あたしも、立ち上がり、

目の前の大きな子供の相手をしてあげることにした。

っというか、

あまりにも楽し気な善の空気に、

また、手招きされている。


丸太の上を、

バランスを取りながら歩き出すあたしに、

善が向こう側から、
急いで戻ってきて、

あたしの丸太を足で揺らし、邪魔に入った。


そのせいで、落ちそうになったあたしに、


善は、ジャイアン並みに意地悪に笑った。



「ふんっ!」て、そっぽを向いたあたしの顔も、

本当はいっぱい、いっぱい笑っていた。


そっぽを向いた方向に、さっきまで、花火の5人組が占領していた、高台があった。



あたしは、ここへきた時から、そこに登りたかった。


そこから見える景色を想像して。



海水浴のシーズンに入ると、監視員がスピーカーを持って座っている、海岸の一等地。


誰もいなくなった今、そこはあたしと善のモノになった。

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