繋いだ手
上から差し出したその手からも、


いつもと違う表情が見え隠れした。


けれど、それを悟られないようにしている、
善の様子を察知して、


あたしも慌てて、そっち側の気持ちと、自分のソレを流そうとした。


さっきまでいた場所からここまでは、たった2メートルくらいの高さだろう。


けれど、善を初めて¨男¨として意識した瞬間のあとだったから、


その景色は、今まで見た学校の屋上よりも、

展望台から見た景色よりも、


何だかとっても空に近かった。


肌がパリパリになりそうな程、冷たい夜風のはずが、

一瞬高まった気持ちのせいで、生暖かい。     

名も知らない小さな星、

それを目隠しする雲、

波の音、


ソレを包み込む光たち。


その、どれもがみな、優しい気持ちにさせてくれる。


「うわぁ〜。善、すごくない?キレイだねぇ。ねぇ、よかったぁ。

登ってみてよかったねぇ。あぁぁ〜、ホント、キレイ。うれしい〜!」
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