サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
「あなたは、

 所詮他人だから、

 こんな事言えるのよ!

 人様がこんな目に合って

 さぞかし楽しいでしょうね。

 テレビより現実味あるし、

 生で見れる

 ドラマのような気分に

 なってるんでしょう!

 そんな中途半端な気持ちで

 私達家族に近寄るのは

 辞めて!

 もう、ほっといてよ。」

有喜の母親は泣き崩れ、

生きる気力を

失っている。
 
純一は、

現実から逃れようとしている

有喜の母親の肩を

そっと抱き、

「あなた一人だけが

 こんなにきつい思いを

 しているんじゃないんですよ。

 僕だって、

 こんな現実認めたくない。

 有喜だって同じです!

 けど…

 これが現実なんです。

 現実を認めない限り、

 有喜に的確な治療を

 与えてやる事も出来ない…。

 あんな冷たい医者、

 有喜の病気を

 僕たちの手で良くして

 見返してやりましょう!

 今までに例のないくらいの

 幸せな闘病生活を

 見せつけてやりましょうよ!

 御手洗さん…」

純一は

有喜の母親を説得しながら、

自分自身も説得していた。

有喜の母は

純一の気持ちを聞き、

有喜の存在と

自分の過ちを悔い、

その場に泣き崩れた。

純一は有喜の元へ行き、

有喜を精一杯の気持ちで抱きしめ、

「一緒に頑張ろうな。

 これからも、

 ずっと守っていくから。」

そう言って、

純一は泣きながら有喜を

ずっと

離さなかった。
 
「私死なないよ。

 病気なんてやっつけるから!

 純一、

 見守ってて♪」

純粋な顔で

有喜は微笑みかける。

純一は時間が経つのも忘れて

抱きしめている。

日も落ちて

辺りは真っ暗になっていた。

3人の後ろ姿は

つらいながらも、

強い勇気に満ちあふれている、

そんな感じがした。
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