社長と小悪魔ハニーの年の差婚
「それはトーマの体裁が悪くなるから?」



「そうじゃない…」


「じゃあ、何よ!?」


私は鞄のチャックを開けて、クローゼットの中の服を鞄に詰めていく。



私の詰りに押し黙るトーマ。


「雑誌が発売されたら、この邸宅にマスコミが押し寄せる…まぁ…俺も暫く…ホテル暮らしなるし、実家に帰ってもいいかもしれないな。この機会に両親に親孝行して来い…でも、お前が運転は危険だ…俺が実家に送り届けてやる」


「はぁ?何、それ!?さっきは帰るなって言ったのに…支離滅裂じゃない!」


「悪かった…」



トーマは私を強引に腕の中に引き込む。

暴れる私を抑え、強い力でギュッと抱き締めた。
トーマの匂い。

煙草、香水、汗の匂いが混じっていて、決していい匂いじゃないけど。私を安心させてくれる香り。


このまま、流されてしまいそうな雰囲気を醸し出すけど、私はみずから、渾身の力でトーマの腕から逃げた。
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