Vrai Amour ~美桜の場合~
ただ、少し・・・・
モデルというきらびやかな世界に足を踏み入れてみたいという願望はある。
一度だけ読者モデルをしているちひろの撮影現場を見せてもらったことがある。
当然そこでもスカウトを受けたんだけど、その時はまだ綺麗に変身していくちひろに
いいなぁとうらやましく思うだけだった。
「あの・・・無断で撮って本当すみません・・・でもっ」
急に押し黙ってしまった私に、陸は怒っていると思ったのだろう。
急に大きくなった陸の声に驚いて顔をあげた。
「・・・・先輩の本当の笑顔を撮りたいんです」
「え?」
「笑っているのに、いつも寂しそうで・・・」
私は何も言えないまま陸の言葉を待った。
「それに、僕だったらセンパイをもっと綺麗に撮れる自信があります」
勢いでぎゅっと握られた左手が熱い。
メガネの奥の瞳は、今にも泣き出しそうに潤んでいる。
でも、その瞳はまっすぐに私を捕らえて離さない。