しゃぼん玉

そんなイライラや不満を抱えて、メイを可愛がれるはずがなかった。

育児の大変さを知らない夫が、仕事から帰ってのんきな顔でメイをかまっている姿にも猛烈に腹が立った。

母親の自覚を持てない翔子と子煩悩な夫は、すぐに言い合いになった。

「どうして自分の子供をかわいがれないんだ!

メイ、またこんなとこにアザ作ってる……。

翔子がやったんだろう!?」

「生みたくて産んだ子じゃないから!!

本当は私、演劇だって続けたかったのに!!」

その言葉は、まだ10歳にも満たなかったメイの胸にグサリと突き刺さる。

“私は、いらない子?

お母さんのしたいことを、邪魔しちゃったの?”

どこにもケガをしていないのに、メイは全身から血が出ているような痛みを感じた。

翔子の暴言に怒った夫は、

「メイの前でなんてこと言うんだ!!

それに、劇団を辞めて結婚することに決めたのは翔子だろう。

メイのせいにするな!」

「こんな結婚だと思ってなかったからよ!

あなたはいつも、忙しさにかまけて私の話なんて聞いてくれないじゃない!!

メイのことはかまうくせに……。


もう、うんざり!!

私には、メイもあなたも必要ないから!!」

翔子のこの言葉で、夫婦の関係には大きな大きなヒビが入ることになる。

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