しゃぼん玉

ずっとそんな気持ちを消すことが出来ず、むしろ日々、強烈なものになっていった。

メイの存在がわずらわしかった。


それまで核家族で育ってきた翔子には、赤ん坊と接した経験も全くなく、慣れない育児にイライラした。

思うようにいかない。

眠りたいのに泣きやんでくれない。

疲れているのに母乳を欲しがる。

買い物に行くと大声で泣き続け、周りの「うるさいなぁ」という視線や声が突き刺さる……。


子供とは、なんてうっとうしい存在なのだろう。


夫にグチをこぼしても、

『メイは悪気があって泣いてるわけじゃないよ、今だけだから』

翔子の気持ちに共感してくれることはなかった。

『翔子もつらいよね』

そう言ってもらえたらまだ頑張れたのに、夫は育児のつらさに理解を示してはくれなかった。

『翔子だけじゃないよ。

俺も仕事で疲れてるんだ……』

そう言われた瞬間、夫への愛情が冷めた。

夢をあきらめた代償は思っていた以上に重く、苦しいものだった。


メイが歩けるようになっても、母乳を離れ離乳食を食べるようになっても、翔子は嬉しいと感動したことはなかった。

他の母親のように、自分の子供の成長を喜ぶことが出来なかった……。

『今日ウチの子、初めて字を書いたんですよ~!

泣いちゃいましたぁ』

というママ友の言葉に、口では同意や関心を示したが、

内心では、

“そんなの当たり前でしょ。

人間なんだから”


メイに対し『早く育って家から出ていけ!』と思っていた。


翔子は全てに冷めていた。

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