しゃぼん玉
メグルはその紳士的な雰囲気の男に気さくに笑いかけ、
「またいつでも呼んで下さいっ。
みんな待ってますんでっ」
男はお付きの運転手を近くに待たせていたようで、こちらに向かって満足そうに手を振りつつ、その高級車の後部席に乗り込んだ。
メグルはたった今男から受けとった札束をペラペラさせ、メイに話しかけた。
「あの人、親の会社継いだのはいいけど、親が決めた人と結婚してからいいことなかったんだって。
お金は有り余るくらいあるみたいなんだけどねっ」
「へえ……」
今の男とメグルは、出会い系サイトで知り合ったらしい。
今日のこの約束も、そのサイト内限定のメールを使ってやり取りし、決めたそうだ。
メイはその話を聞いて両親の離婚を思い出し、
“結婚って、愛がなくても出来るんだ”
と、改めて思った。
「メイ、今夜ウチ来なよっ。
どうせ今日も、ラブホ泊まる予定だったんだろ?」
メグルの家には前にもしょっちゅう泊まらせてもらっていたので、メイは静かにうなずいた。