しゃぼん玉

メグルはその紳士的な雰囲気の男に気さくに笑いかけ、

「またいつでも呼んで下さいっ。

みんな待ってますんでっ」

男はお付きの運転手を近くに待たせていたようで、こちらに向かって満足そうに手を振りつつ、その高級車の後部席に乗り込んだ。

メグルはたった今男から受けとった札束をペラペラさせ、メイに話しかけた。

「あの人、親の会社継いだのはいいけど、親が決めた人と結婚してからいいことなかったんだって。

お金は有り余るくらいあるみたいなんだけどねっ」

「へえ……」


今の男とメグルは、出会い系サイトで知り合ったらしい。

今日のこの約束も、そのサイト内限定のメールを使ってやり取りし、決めたそうだ。

メイはその話を聞いて両親の離婚を思い出し、

“結婚って、愛がなくても出来るんだ”

と、改めて思った。


「メイ、今夜ウチ来なよっ。

どうせ今日も、ラブホ泊まる予定だったんだろ?」

メグルの家には前にもしょっちゅう泊まらせてもらっていたので、メイは静かにうなずいた。

< 194 / 866 >

この作品をシェア

pagetop