しゃぼん玉
「たっだいまぁ!」
メグルはテンション高く自宅の玄関の扉を開けた。
昭和初期に立てられた、古い母屋。
メグルはここで、祖父母と三人暮らしをしている。
メイもメグルに続いて玄関を通った。
奥の方からおでんの匂いがする。
「ばぁちゃん煮物好きでさぁ。
ごめんね、いつも古くさい料理ばっかで」
そう言いながらもメグルはそれが大好きなのだろう、と、メイは察した。
いつだったか、メグルはこう話していた。
「ウチのばあちゃん達、年金暮らしでさぁ。
なのに私の面倒見てくれてるの。
正直、キツイと思うんだよねー。
だから、お小遣いとかあげるって言われても全部拒否ってる。
その代わりに万引きしてんの。
って、これがバレたらじいちゃんもばあちゃんもショック死しちゃうかもしんないけどねっ」
メイには祖父母がいないのでそう話すメグルの心境は理解できなかったが、その話はなぜだかすごく印象的で、うらやましいと思った覚えがある。