しゃぼん玉

清やミズキの言動に、裏は感じられなかった。

ミズキと共に清の見舞いに行き、ミズキと過ごした三週間。

メイは、生きているリョウがそばにいるような錯覚を繰り返していた。


メイの記憶に今も鮮明に残っている、リョウの口癖や仕草。話し方。

……それは驚くほどミズキにそっくりで、ミズキを見ていると、リョウを見ているような気持ちになった。


「リョウはO型で、私はA型なんだ」

清の見舞いから帰る途中の、夕焼け空の下。

ミズキはそう言って笑っていた。

その笑顔を見て、メイは思った。

血液型ではなく、家族だから二人は似ているのだ、と。



翌日。メイはミズキと共に、大成と菜月が用意してくれた喪服を着て清の葬儀に参加した。

清の葬儀は、滝川家でしめやかに行われた。


ミズキと共に現れたメイを見て、メグルは泣きはらした顔で二人に近付く。

「メイ、昨日はごめんね。

あたし、自分のことしか見えてなかった……」

「仕方ないよ」

メイが少しだけ声に心を込めると、メグルは嬉しそうにニカッと笑い、メイの頭をなでた。


黒い影で溢れるこの家には、メイが世話になっていた頃のぬくもりがかすかに漂っていて、メイの頬には一筋の涙がこぼれる。

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