△~triangle~

「やめてくれ……もうやめてくれよ!!母さん!!」

一人きりの部屋の中、決して届く事の無い叫びを上げ、強く膝を抱え続ける。

それと同時に頭の中に《あの時》の映像が鮮明に蘇り、大きく目を見開いたまま震える手をギュッと握り締めた。

目の前には燃える様に赤く染まった空が見え、そしてその夕日が照らす残酷な光景にガタガタと体が震えた。

「……やめ…ろ」

そう声を震わせたまま、ズルズルとベッドの上で後ずさる。

……これは幻だ。

……そんな事は分かっていた。

しかし目の前のもう何度目かも忘れたその幻想から目を背ける事が出来ないまま、ただ茫然とその光景を眺め続ける事しか出来ない。

薄暗い部屋の中、一人の女が床に横たわっている。

その病的なまでにやせ細ってしまった体を、窓から差し込む夕日が静かに照らしていた。

そして床に広がる、夥しい……《赤》
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