△~triangle~
12 遠き夢(明)

……夢を見た。

それは遠い、遠い昔の懐かしい記憶。

……シンと静まり返った一人きりの広い部屋。

勢いよくベッドから飛び起きると、ゼイゼイと肩を揺らしたまま荒い呼吸を続ける。

「……どうして……どうしてこんな事に」

ブツブツとそう繰り返しながら、ベッドの上で小さく膝を抱えた。

眠れば必ず襲われる酷い悪夢に、俺は眠れない夜を過ごし続けていた。

《どうしてあの人は……私を愛しては下さらないのかしら》

《負けないで……明》

《あんな子に……あんな女の子供に負けないで》

《……貴方こそが、この須藤家を継ぐに相応しい後継者なのだから》

まるで呪いの様な母の囁きが繰り返し頭の中に響き、それを振り払う様にブンブンと首を横に振った。
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