△~triangle~

「今日はいい夢が見れるといいね!!」

彼女はそう言ってニッコリと笑うと、俺に向かってブンブンと千切れるくらいに手を振って見せる。

そして地面に投げっ放しだったケースにバイオリンをしまうと、もう一度俺に向かって手を振り……そのまま門へと向かって走り出す。

「……待っ……」

窓を開け少女を呼び止めようとして……その口を噤んだ。

……声を掛けて……一体どうするつもりなのだろうか。

……こんな俺が……こんな俺に……一体何が出来る。

そんな事を考えながらそっと窓を閉めると、自嘲気味に笑った。

そのままフラフラとベッドに背中から倒れ込むと、そっと目を閉じる。
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