△~triangle~

《今日はいい夢が見れるといいね!!》

その彼女の言葉が頭の中に響き、それと同時に流れたままの涙に気付く。

目を閉じたままそっと流れる涙に触れると、小さく笑みを浮かべた。

……不思議だった。

さっきまで絶えず襲われていた虚無感も、不安も、恐怖も……何も感じない。

あの名前も知らない少女が奏でたあの曲が、繰り返し俺の頭の中に響き続ける。

それは……優しい子守唄。

「……今日は……眠れる気がする」

多分いつもと違うはずの温かな涙に触れたまま小さく呟くと、優しい母の記憶を思い出しながら静かな闇に落ちて行く。

……ノラ。

……君は知らない。

俺がどんなに……君に救われたのか。

君の《音楽》が……どんなに俺を救ってくれたのか。

たった一瞬の、ほんの一時の君の優しさが……俺を変えてくれた。

……そう……今でも信じているんだ。

俺はこの時、君に《恋》をした。

たとえそれが……決して赦されない恋だとしても、俺は君を想い続けるだろう。

その《想い》が最悪な《未来》を招いたとしても……この歪んだ心は永遠に君に囚われたまま。

……ノラ。

……君は知らない。


俺が隠した……深い闇の欠片を。
< 178 / 451 >

この作品をシェア

pagetop