△~triangle~

『だって好きなの!!どうしようもないくらい、明が好きなの!!それだけ……それだけなのに』

そこまで言って彼女は声を詰まらせると、ポロポロとまるで宝石の様な涙を零した。

その雫は僕の胸を締め付け、それと共に自分の愚かな気持ちを思い知らされる。

……彼女は僕と一緒だ。

どうしようも無いくらいに好きになった人に……絶対に受け入れられない。

そんな悲しい現実に押し潰されそうになっている。

……どうして人の心は、こんなにも割り切れないものなのだろうか。

自分の好きな人が、自分を好きでいてくれたら……自分の必要とする人が、自分を必要としてくれたら。

ただそれだけの事なのに……どうしてこんな風に歪んでしまうのだろうか。

……愛は人の心を歪ませる。

求めれば求める程に、愛せば愛する程に……それは狂おしい炎を纏い、そして全てを焼き尽くそうとする。

強く優しい彼女の面影は……今は見えない。

そんな悲しい彼女の姿を見つめたまま、ギリッと歯を食い縛った。

……僕だって同じだ。

どんなにその心が欲しいと望んだ所で、決して手に入る事は無いのだから。

……そう……《あの子》が居る限り。






『じゃあ、君が消してくれるの?明の何よりも大切なモノを』

嘲笑を浮かべた僕の決して言ってはならないその言葉に、彼女は涙の溢れる瞳を大きく見開き、それから……悲しく甘美な歪んだ笑みを浮かべて見せた。
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