△~triangle~

「……ごめんね真弓さん」

そう小さく呟き、手にしたままの花束をそっと地面に置いた。

白い真新しいガードレールの張られた歩道の上で、彼女によく似合っていた美しいバラの花弁がヒラヒラと風に揺れる。

その悲しい光景をただ茫然と見つめたまま、小さく口を開く。

「……僕のせいだ。あの日僕があんな事を言わなければ……こんな風にはならなかったのに」

そう呟いた瞬間、まるでそれに答える様に強い風が吹き、真っ赤な花弁が宙を舞った。

まるで血の様に赤いその花弁を見つめたまま、強く拳を握り締める。

「後悔した所で……全てが遅過ぎるけどね」

そう言って自嘲気味に笑うと、更に強い風が吹き抜け、赤い花弁を運んで行く。

「やっぱり神様っているのかな」

一人きりの抜ける様な空の下、そう呟いてクスクスと笑う。

奪われた翼に絶望しながら、僕達の目の前に現れた天使様。

まるで僕等が出会う事が運命だった様に、繰り返し出会い、傷付け合い、求め合って、憎しみ合う。

そんな僕等の未来は、一体どこに向かうのだろうか。

彼女の存在は僕等の関係を大きく変えて行く。

そう……もう決して戻る事の出来ない大きな渦に、僕等は足を踏み入れてしまった。

「どうして……こんな風になってしまうのかな」

抜ける様な青い空を仰いだままそう呟くと、まるで泣いているかの様な風の音を聞きながら……そっと目を閉じた。
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