△~triangle~

「いいよ、教えてあげる」

「……いいの?」

俺のその言葉にノラは俯く顔を上げると、窺う様に俺を見つめた。

それから……ノラに俺と蓮の生い立ちを簡単に説明した。

俺は元々お坊ちゃま育ちで、SUDOUグループの後継者として育てられていた事。

蓮は親父の……愛人の子で、蓮が13歳の時、親父に引き取られ、俺の住んでいる家で一緒に生活を始めた事。

親父とはそれが原因で仲が悪くなった事。

俺の母親はすでに亡くなっている事。

最初こそ上手くいかなかったが、蓮と仲良くなり、一緒に家を飛び出した事。

それからずっと一緒に暮らしている事。

俺の口から放たれる面白くも無い話を、ノラは複雑そうな顔をして静かに聞いていた。

……でも、俺はノラに大切な事は何一つ話していない。

俺と蓮の間に本当は何があったのかも、本当は俺や蓮がノラを知っていた事も……俺達の隠し続けている真実も。

……俺はずるくて卑怯だ。

心の中で小さく呟き、自嘲気味に笑う。

「俺がノラにこの話をしたのは内緒な?アイツ、こういう話するの、凄く嫌がるんだ」

「……う、うん」

俺のその言葉にノラはコクリと頷いて返すと、また何かを考える様に俯いた。

そんな彼女の姿に小さく胸が痛み、しかしそれに気付かない振りをしながら笑みを浮かべる。

「……ディープでしょ」

その俺の呟きにノラは俯く顔を上げると、キョトンと俺を見つめた。

そしてすぐに困った様に眉を顰めると……《ディープだね》と小さく呟いて笑ってくれた。
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