△~triangle~
16 触れる指(ノラ)

窓から見える街の景色が、綺麗なオレンジ色で染まって行く。

そんな幻想的で何故か切なく感じる景色を眺めたまま、深い溜息を吐いた。

あれから明と昼食を食べると、明はバイトがある様で部屋を出て行った。

また一人と猫二匹の部屋の中、ボーっと外の景色を眺めている。

しかしその間も頭に廻っているのは……あの写真の事だった。

須藤さんが差し出したあの写真。

その写真に写っていた黒髪の少年が、私がずっと探していたあの大好きな少年。

そしてそれが……

そんな事を考えていたその時、ガチャリと玄関の扉が開く音が聞こえた。

その音に勢いよく後ろを振り返ると、玄関に入って来た蓮とバッチリと目が合う。

「ど、どうしたの?」

勢いよく振り向き表情を硬くする私を見て、蓮は鍵を手にしたまま不思議そうに私を見つめている。

その蓮の問いに上手く言葉が出て来ず、蓮を見つめたままアワアワと視線を泳がせた。

「何かあったの?電気も点けないで……」

そう言って蓮は壁についているスイッチを押し電気を点けると、持っていたビニール袋を椅子の上に置き、スタスタと私の目の前まで歩いて来る。
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