△~triangle~
17 終わりの口付け(蓮)

キッチンで夕食の支度を終えると、そっと壁に掛けられている時計を見つめた。

時刻はすでに20時を過ぎていて、大きな窓からは星の見えない薄暗い空と、街の眩い光が見える。

……そろそろ明が帰って来る。

そんな事を考えながら、そっと《彼女》に視線を向けた。

彼女は僕に背を向ける様に膝を抱えたまま、部屋に置かれているテレビを見ている様だった。

その彼女の横にはシロとクロが寄り添い、眠っているのが見える。

テレビにはたいして面白くもないニュースが流れていて、おそらく彼女の意識はテレビには向けられていないと分かった。

料理の後片付けを終えると、彼女の方には行かず、ダイニングテーブルの椅子にそっと腰を下ろす。

彼女は僕の動きに気を張っている様で、微かにこちらを振り返ったが、すぐに視線をテレビへと戻した。

二人と猫二匹のこの部屋には重苦しい空気が広がり、彼女には気付かれない程に小さく息を吐く。
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