△~triangle~

……あれからノラは何も話さない。

僕と目を合わせようとせずに、何か考える様に俯き、ああして膝を抱えている。

僕もまた彼女に声を掛ける事が出来ず、息苦しさを抱えながら微かに唇を噛み締めた。

……まさかノラが僕を覚えているなんて思わなかった。

十年前、彼女がまだ小学生だった頃……僕とノラは出会った。

出会ったと言うのは間違いかもしれない。

僕は自ら望んで彼女に会いに行った。

《あの人》が目を掛ける少女が……一体どんな奴なのか。

それを知りたくて、僕は彼女に接触した。

……そんな事をしても苦しくなるだけ。

そんな事は分かっていたが、どうしても僕には止める事が出来なかった。

……どうしてあの子なのだろうか。

……僕が望む全てのものを持っているのが、どうしてあの子なのだろうか。

そんな事を考えながら、あの子がよく来るという公園で僕はあの子が現れるのを待ち続けた。

そしてあの子が現れたその時、思い切って声を掛けた。

可愛くて優しい……天使の様な女の子。

何も知らない……残酷な子。

それから何度も僕等はあの公園で会う事になった。

特に待ち合わせをする訳では無かったが、気が向いた時に公園に行き、彼女が居れば一緒に遊んだ。

仲良くなり僕に気を許した彼女が話す言葉に、僕はいつも息が出来なくなりそうな程に胸が苦しくなった。

あの子の話す《彼女》の話に笑顔を返しながらも、心の奥底では醜い嫉妬に駆られているのが自分でも分かった。

……どうしてこの子なのだろうか。

……どうして僕ではダメなのだろうか。

……どうして……どうして……
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