△~triangle~
23 家族(蓮)

《……あの子を……許してやりなさい》

それが僕が聞いた、祖母の最後の言葉だった。

真っ白なベッドに横たわった祖母は、最後にそう言って息を引き取った。

僕とおばあちゃん……たった二人きり。

物心がついた時から、そんな生活が当たり前だった。

ゆっくりと静かに時が流れて行く様に感じたあの狭い部屋で、僕達は……僕はいつも《あの人》の帰りを待っていた。

……彼女がもう戻らない事を知っていた筈なのに。

冷たくなったしわしわの祖母の手を握り締めたまま、茫然とそんな事を考える。

そう……こんな時ですら、あの人はここに現れないのだから。

全てを諦めた様に小さく笑みを浮かべると、もう動かない祖母の手をキュッと握り締める。
< 276 / 451 >

この作品をシェア

pagetop