△~triangle~
23 家族(蓮)
《……あの子を……許してやりなさい》
それが僕が聞いた、祖母の最後の言葉だった。
真っ白なベッドに横たわった祖母は、最後にそう言って息を引き取った。
僕とおばあちゃん……たった二人きり。
物心がついた時から、そんな生活が当たり前だった。
ゆっくりと静かに時が流れて行く様に感じたあの狭い部屋で、僕達は……僕はいつも《あの人》の帰りを待っていた。
……彼女がもう戻らない事を知っていた筈なのに。
冷たくなったしわしわの祖母の手を握り締めたまま、茫然とそんな事を考える。
そう……こんな時ですら、あの人はここに現れないのだから。
全てを諦めた様に小さく笑みを浮かべると、もう動かない祖母の手をキュッと握り締める。