△~triangle~

「私達……向き合わなくてはいけないのかもね」

ポツリと呟いた彼女の言葉に、静かに顔を上げる。

「……逃げているばかりじゃ……ダメなのかも」

彼女はそれだけ言うと、ベンチから立ち上がり大きく息を吐く。

「貴女にこんな事を言う資格なんてないと分かっているけど、ひとつだけ……頼んでもいいかしら?」

背を向けたままの彼女の問いを肯定するように沈黙を続ける。

すると彼女は静かに私を振り向き、そして……笑った。

「あの子を……お願い」

彼女のその言葉に深く頷いて見せると、彼女も同じ様に頷いて見せる。

その彼女の瞳に、微かに涙が滲んでいる事に気付いたが……そのまま彼女に背を向け歩き出す。

「いつでも帰って来なさい。貴女の居場所は……ちゃんと《あの家》にある」

背中越しに聞こえたその言葉に《はい》と短く答えると、そのまま真っ直ぐに走り出す。

……向き合わなくてはならない。

目を背け続けている沢山のモノに。

私も彼等も……そしてあの人達も。
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