△~triangle~

かつてこの手から生まれたはずの美しい旋律の面影は全く現れず、酷く不安定で耳障りな音が断続的に鳴り続けた。

その音は失ったモノの大きさを私に突き付け、それに胸が苦しくなる。

しかし一音一音を確かめ、この身体に刻まれた音の欠片を思い出す様に、バイオリンを弾き続けた。

指も上手く動かず、長い間練習をしていない私の手からは、美しい《音楽》は生まれてくれない。
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