リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
髪を梳くように撫でる明子の指の気持ちよさに、うっかりと目を閉じてしまったら、そのまま眠ってしまいそうだった。

デカい図体で全力で甘えるなと、兄貴分たちにはよく叱られるけれど、この腕が自分を甘えさせてくれるのだから仕方ないじゃないか、牧野は胸中でそう反論した。

恋人同士のスキンシップを求めると、すぐに緊張してしまう体には、やれやれ困ったものだと思いつつも、そんな恥じらいを見せる明子の初な性格は、内心、愛しくてたまらなかった。
口に出しては言わないけれど、そんなところもなにもかも、牧野にはかわいらしくて仕方なかった。

あちらこちらに、宥めすかしながら手を伸ばして触れると、その度に過敏に、でも幼い、そんな反応を見せる明子に、牧野はずっと目じりが下がりっぱなしだった。
目を閉じて、息を詰めて、どうすればいいのか判らない沸き起こってくる甘い疼きに耐えている明子に、悪戯する手がなかなか止められなかった。


(けっこう。いや、かなりだな)
(エロい体をしてんのにな)


想像している以上に、柔らかで豊かな膨らみを持つ乳房に。
ゆるやかで滑らかな腰のラインに。
みっしりとほどよく肉付いている太腿に。

熟し始めている女だけが放つことができる色香を感じさせながら、まだ本当の女の悦びを知らないと、そう牧野に教えてくる体が堪らなかった。

決して、男を知らない体ではない。
それは牧野にも判っている。
でも、男に慣れている体ではない。
それが牧野には判った。
そんな明子に、自分の中の牡が悦んでいることを、牧野は自覚した。

きっと、極上の花になる。
甘い蜜を滴らせる。
綺麗な綺麗な花になる。

腕の中で、牧野の指と吐息が齎すかすかな愉悦に恥らいながらも体を震わせている明子の姿に、牧野は必至に自分を戒めた。
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