リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
街の中心地から少し離れたこの会社の前を通る幹線道路は、あんがい、人通りがなくなるのが早い。
コンビニくらいは夜中でも開いてはいるが、周辺の飲食店などは、遅くても二十二時には大抵が閉まってしまう。
治安が悪いところではないが、数年前、一度だけ、不審者が目撃されたことがあり、ちょっとした騒ぎになったことがある。
車の通りも少なくなってきた道沿いの小さなバス停に、彼女が一人でぽつんと立っている姿を想像すると、心配が先に立った。

なるべく送ってやろうと、今週はできるだけ直帰はせずに、遅くなっても会社に戻るようにしていたが、いつもバスの時刻に合わせて、彼女は会社を出てしまう。
月曜の一件で妙に警戒させてしまったなと、牧野は鼻の頭を照れくさそうな顔で掻いた。


(ちと、いきなり過ぎたな)
(ありゃ)


手が触れた瞬間、体を震わせ固まってしまったときの顔が脳裏に浮かんだ。
つい、目元が緩む。


(あんがい、初だからな)
(あいつ)


頬も、自然と緩む。
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