リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「お情けで、主任になったやつが……」
「ウチの会社はね、もともと、女性は役職につきにくい会社なの。特に営業はね」

新藤の言葉を遮って、明子は淡々と言い聞かせた。

「だから、お情けと言われても、私はまったく恥かしくもないわ。けど、男の子のキミがお情けでなんて言われたら、恥かしいんじゃないの? 今のままじゃ、そう言われるようになっちゃうわよ? 入社試験の成績が散々だったのに、お友だちのコネで入社したことは、みんな知っているんだもの。がんばって挽回しないと、ずっと、そのレッテルを貼られたままよ?」

新藤の真っ直ぐに見て、明子はそういい諭した。
いい加減、しゃんとしなさいよと、そんな思いを込めて新藤を見据える。
明子の言葉に、唇が切れるのではないかというくらいきつく噛み締めているその顔に、少し言いすぎたかなと思いながら、明子はまた美咲を見た。
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