リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「君島さん」

牧野のか細い弱々しい声に、それでも、君島は安堵の息を吐いた。

「ん。俺だよ。判るな?」

君島の肩に頭を乗せて、牧野はこくりと頷いた。

「大丈夫そうか?」

様子を見ていた小林が、誰にともなく、そう声をかけてきた。

「大丈夫、だよな?」

耳元で囁かれた君島の穏やかな声に、牧野はまた、こくりと頷き、小林を見上げた。

「大丈夫、です」
「ん。じゃ、落ち着いたら帰ろう。な?」

送るから。
ポンポンと、小林が牧野の頭をあやすように叩く。
それが合図だったように、部屋に明かりが灯った。

「お。発電機。動いたな」

とりあえず、サーバー落としてきちまうよ。
牧野の傍らで、一緒にしゃがみ込んでいる君島に、小林はそう告げて、書庫で区切られるようにして作られた、サーバー機を集めた一角に入った。

「あぁっ?!」

怒りとも驚きともつかない小林の声が聞こえ、牧野はやや怖がるように体を震わせた。
その太く低い男の声に、まだ血の下が引いたままの牧野の顔が強張った。
それを宥めるように、君島は牧野の頭を叩き撫でながら、小林に声をかけた。

「どうした?」
「サーバー、落ちてるよ」

なんでだ、おい。
小林の言葉に、君島と牧野は顔を見合わせた。



長い夜の始まりだった。
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