リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「直ってなんかいませんよ。諦めただけです。いいです、もう」

また、表情のなくなった顔でそっぽを向く明子に「なんだっていうんだよ、お前も、訳が判らねえな」と、牧野はうんざりとした声で吐き出した。
間にいる小林がそんな牧野にどうしようもねえというように、肩を落とし気味に項垂れた。

「課長さん。あのな。いきなり、アレをどうにかしろと、押し付けられたほうの身にもなってくださいよ」
「だって、君島さんか小杉でなきゃ無理でしょ。あいつら」
「私だって無理なのに、あんな子たち」

ふてくされたようなその言いように、牧野が切れたように明子に言い立てた。

「まずは、やるだけやってみろよ。無理なら無理でいいからさ。なんで、なにもしてないうちから、無理無理言ってるんだよ。まずはやってみてくれよ」

普段あまり聞くことのない、語気を荒げてまくし立てる牧野に、木村は目を丸くして、なにが始まったんだと言うように、牧野と明子をきょときょと眺めていた。
揉め事の原因を察した沼田は、申し訳なさそうに明子を見ていた。

「君島さんが匙を投げちまった以上、あとは小杉しか残ってないんだよ、あいつら、教育し直せるの。だから、頼んでるんだろう。厄介で面倒なのは判るけど、面倒くせーを理由に……」
「やります」

一方的に喋り始めた牧野に、明子は「もう、いいです」と、固く強張った声でそう言い放った。

「やれば、文句ないんですよね」

もう、いいですよ。
尖った言葉の先端で、なにかを切り捨てるようにそう言った明子の横顔に、牧野は言葉を飲み込んだ。
小林が小杉を宥めように背中をポンポンと叩き、牧野をじろりと睨みつけて「バカめ」と罵った。

「バカって」
「バカはバカだろ。バカ」

どうしようもないバカやろうだと、小林はあきれ笑いを浮かべた。
< 728 / 1,120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop