リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
試験対策用の問題集と、貴重品が入ったミニバックとランチバック。
それから、机を拭く雑巾を持って、明子は給湯室へ向かう。
いつもより、ちょっと遅い出社だったので、朝の挨拶を交わす顔ぶれが、少し違っていた。
いつも顔を合わせてる清掃業者の女性たちとは、いつもと少し違う場所で、顔を合わせた。
-なんなのかしらね、あの人。
-着物なんか着てねえ。
-一緒にいる女の子は、社員の人でしょ。
明子が挨拶の声をかける前に、彼女たちのそんなヒソヒソ話が聞こえてきた。
女性たちは明子の顔を見て「おはようございます」と言いながら、珍しく、その中の古参の女性が挨拶以外の言葉を明子にかけてきた。
「なにか、見たことのない、着物を着た女の人がね、入りこんでいるんですよ。どうしましょうね」
「女の人?」
「こんな時間でしょう。お客様にしてはヘンよねえって。今、みんなで話してて」
「そうですね。着物姿でお見えになるお客様って、いないような気がします」
「そうですよねえ。なんか、入館許可証もつけてなくて、会社の中をうろうろしているんで、おかしいなと思って声をかけたんですけど、無視して、第ニさんの部屋に入っていっちゃって」
その言葉に、明子は顔色が変わる。
室内には、社外秘の資料が山ほどある。
何食わぬ顔で待ちだされてしまっては大変なことになる。
「守衛さんに、連絡しましょうか、やっぱり」
やや心配げな声でそう問いかけてきた女性に、不審者を見つけてくれた礼を言い「とりあえず、見てきます」と答えると、明子は走り出した。
それから、机を拭く雑巾を持って、明子は給湯室へ向かう。
いつもより、ちょっと遅い出社だったので、朝の挨拶を交わす顔ぶれが、少し違っていた。
いつも顔を合わせてる清掃業者の女性たちとは、いつもと少し違う場所で、顔を合わせた。
-なんなのかしらね、あの人。
-着物なんか着てねえ。
-一緒にいる女の子は、社員の人でしょ。
明子が挨拶の声をかける前に、彼女たちのそんなヒソヒソ話が聞こえてきた。
女性たちは明子の顔を見て「おはようございます」と言いながら、珍しく、その中の古参の女性が挨拶以外の言葉を明子にかけてきた。
「なにか、見たことのない、着物を着た女の人がね、入りこんでいるんですよ。どうしましょうね」
「女の人?」
「こんな時間でしょう。お客様にしてはヘンよねえって。今、みんなで話してて」
「そうですね。着物姿でお見えになるお客様って、いないような気がします」
「そうですよねえ。なんか、入館許可証もつけてなくて、会社の中をうろうろしているんで、おかしいなと思って声をかけたんですけど、無視して、第ニさんの部屋に入っていっちゃって」
その言葉に、明子は顔色が変わる。
室内には、社外秘の資料が山ほどある。
何食わぬ顔で待ちだされてしまっては大変なことになる。
「守衛さんに、連絡しましょうか、やっぱり」
やや心配げな声でそう問いかけてきた女性に、不審者を見つけてくれた礼を言い「とりあえず、見てきます」と答えると、明子は走り出した。