リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「あの子。偉い人の娘さんなんでしょう?」
「ええ……、まあ」
「じゃあ、偉い人の奥さんなの、あの人?」
「そう、ですね」
「会社の役員さんとかなのかしら?」
「いえ……、それは、違います」
「なら、勝手に入っちゃダメよねえ」
なんだか好き勝手し放題ねえ、守衛さん呼んじゃうとこだったわと、女性も呆れたような声を出しながら、どうやら害はないと判断して立ち去っていった。
全くもってその通りと明子はその言葉に深々と頷きつつ「ご面倒、おかけしました」と、また頭を下げて女性を見送った。
そうして、踵を返した明子は、朝の晴れやかな気分などすでに吹き飛んだ重い気分で、肩をがくりと下げた。
(あの部屋に、入りたくないかも)
(あの中で一人でいるの、イヤかも)
(というか、イヤ)
(ホントにイヤ)
でも、皆が来る前に追い出しておかないと、皆が仕事にならないと、明子は意を決した顔で足を踏み出した。
「おはようございます」
美咲に向かい、そう声をかけた。
その声に明子を見た美咲は、ふいっと顔を背けて、着物の女性に何かを耳打ちした。
年の頃は五十を少し過ぎたくらいだろうか。
あまりにも美咲とよく似たその顔立ちに、中身もそっくりなのねと息を吐いた。
念のため「そちらの方は?」と、美咲に尋ねるより先に、着物の女性が声を発した。
「ええ……、まあ」
「じゃあ、偉い人の奥さんなの、あの人?」
「そう、ですね」
「会社の役員さんとかなのかしら?」
「いえ……、それは、違います」
「なら、勝手に入っちゃダメよねえ」
なんだか好き勝手し放題ねえ、守衛さん呼んじゃうとこだったわと、女性も呆れたような声を出しながら、どうやら害はないと判断して立ち去っていった。
全くもってその通りと明子はその言葉に深々と頷きつつ「ご面倒、おかけしました」と、また頭を下げて女性を見送った。
そうして、踵を返した明子は、朝の晴れやかな気分などすでに吹き飛んだ重い気分で、肩をがくりと下げた。
(あの部屋に、入りたくないかも)
(あの中で一人でいるの、イヤかも)
(というか、イヤ)
(ホントにイヤ)
でも、皆が来る前に追い出しておかないと、皆が仕事にならないと、明子は意を決した顔で足を踏み出した。
「おはようございます」
美咲に向かい、そう声をかけた。
その声に明子を見た美咲は、ふいっと顔を背けて、着物の女性に何かを耳打ちした。
年の頃は五十を少し過ぎたくらいだろうか。
あまりにも美咲とよく似たその顔立ちに、中身もそっくりなのねと息を吐いた。
念のため「そちらの方は?」と、美咲に尋ねるより先に、着物の女性が声を発した。