Vrai Amour ~駿の場合~
直は、親である私が無理に執事になることはないと言ったにも関わらず

自ら執事の道を選んだ。

私が父にあこがれたように、直も私にあこがれていたらしい。

ただ残念ながらあと何年直の姿を見ていられるかわからない。

直が生まれたのが47歳のときだったので、今は私も67だ。

すでに初老を迎えた私たちを恥じずに大事にしてくれる直は私たちにとっても大事な宝物だった。

30年もの間そばで見守っているしか出来なかった私に、こんな大事な宝物を分けてくれた咲子にも感謝している。




私は咲子の肩を抱き、元気に飛び出していく直を見送った。




「お茶にしようか」



直の姿が見えなくなるまで見送ると、私たちは家に入る。
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