それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜



「おやっさんのハヤシライス、やっぱ最高だわ」


「そうかい?サンキュ」


おやじさんはフライパンを振りながら、くしゃりとした笑顔をその客に向けた。


夕方の洋食屋マロンには、少し早い夕食をかきこむホストやキャバ嬢がやってくる。


このホストのレイもその一人だ。


レイはホストのくせに酒に弱いらしく、先に腹に何か入れておかないと酒に飲まれてしまうんだ、と前に話していた。


空になりかけたレイのグラスに水を注ぐ。


「お、サンキュ」


レイは俺が水を入れただけでも、こうしてこまめに礼を言ってくれる。


気さくな人なんだとは思うが、職業病かもと思ってしまったりもする。


その時、カウンターに置いてあったレイの携帯が鳴った。

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