明日の夢


ぼくは、ゆっくりと目を覚ました。
覚ましたという言い方は、普通はおかしいかもしれない。
でも、ぼくは小さなベッドの上で、確かに目を覚ましたのだ。
「……。」
ぼくはなにも言葉を発しない。
当たり前だ。もしもぼくが言葉を発したのなら、誰もが奇妙に思うはずだからだ。
でも、そこには、いつもの『彼女』はいなくて。
たくさんのぬいぐるみが置かれた、その女の子らしい可愛い部屋には
ただただ不気味なほどの静寂が流れていた。


それはほんの数日前の出来事だった。
その日はちょうど、クリスマスイブの日だった。
『彼女』は、いつも通りぼくを鞄の中に入れて学校へ行こうとしていた。
差し掛かる交差点。信号は青信号。それを渡るあの子。

一瞬の出来事だった。
青信号を渡っている彼女に、信号を無視をしたトラックが突っ込んできた。
避けきれず、軽い彼女の身体は、赤いソレと一緒に宙を舞った。
同時に鞄も吹き飛ばされ、ぼくの意識も、そこで途切れた。

次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
横を見ると、彼女の母親が、泣きながら彼女の手を握っていた。
彼女は身体中包帯を巻かれて、人工呼吸器をつけてベッドに横たわっていた。

「先生、娘はどうにか助からないんですか!?」
父親が、そばにいる医師に向かって叫ぶ。
しかし、医師は静かに首を横に振った。
「残念ながら…もう…。」
「そ、そんな……。
う、うわああああぁぁああああぁぁ!!」
部屋の中に、泣き叫ぶ声が響く。

これはいったい、何が起こっているの…?

だって、今日の朝まであの子は元気にぼくとお話しをしていたんだよ?

「今日は学校でクリスマスのイベントが開かれるんだって。楽しみだね。」

って。とても楽しみにしてたんだよ?

それが…どうしてこんなことになるの…?ねえ、嘘だといってよ…。



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