明日の夢
そのときだった。
彼女の瞳がうっすらと開いた。
そして彼女は、消えるような声でつぶやいた。

「お…かー…さん…おとー…さん……?」
その言葉を、そこにいた一同は聞き逃さなかった。
「優夢……!?」
母親の声を聞いて安心したのか、彼女はわずかに、荒い呼吸を吐きながらこう言った。
「ごめんね……おかーさん…おとーさん…。
私…悪い子だから…ばちが当たったのかな……。」

彼女はもう、分かっていたのかもしれない。
命の灯火が消えかけていることを。
そして彼女は、横にいたぼくにも声をかけた。
「りゅうたろう…ごめんね……。
りゅうたろうともっと、遊びたかったよ……。」
そうつぶやいて、彼女はぼくの手を、震える手で握った。

ううん、謝らなくていいんだよ。
ぼくはずっと、君の手を握ってるから。
怖いよ、目の前で、君がいなくなるのが……。

「ねえりゅうたろう……最期のお願い。
聞いてくれる……?」
ボソボソとぼくに、耳元でささやいた。
それを聞いた瞬間、ぼくは、流せない涙を、心の中で流した。


そして彼女は、にこっとかすかに笑うと、
ゆっくりと目を閉じていった。
享年10歳。
早すぎる生命の終わりだった。

そして苦しくも、この物語は、
最愛の彼女を亡くしたところから始まる。






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