五人の王子に仕えしは
ここに来ると体育大会の喧騒は遠のく。人もいないし、少し冷えた湿っぽい空気が辺りを包み込んでいた。
だから本来ひやりとしてて気持ち良いはずなのだが、それとは別に私はひやりとしてて、どちらかというと寒い。マジで。
奏君の手が離れて、普通に解放される。奏君は後ろを向いたままだ。
でも纏ってる空気は恐ろしくて、背中だけでも機嫌が悪いのがわかる。
「えっと……奏君、どしたの?」
「……クソッ」
!?? え、クソ!? なに、私が!? 怖すぎなんだけど!
勝手に怯えていると、奏君がこちらを向いた。
「……へ」
その顔は、予想外に、情けなかった。
奏君とは思えない、いつもは自信満々の眉尻は下がっていて、どこか切なげで、ツラそうな瞳。
そこには怒りというよりは、悲しさを感じて、私は何か言おうと思ってたのに、すっかり忘れてしまった。
「…悔しい」
奏君は苦しげにそう漏らした。
何が? なんて、軽率にそんなこと聞ける様な雰囲気でもなくて、私は黙って続きを待つ。