ナルシストの華麗なる恋愛講座
鏡に写る自分を見る成瀬を見ていると
さっきの成瀬は何だったのだろうと疑いたくなる。
「……」
「え、葉月。なんで僕をそんなに見つめているんだい?まさか、ようやく僕の美しさに気付いたのかい!?」
「アホらし」
呆れていたのよバカ。
私はため息を一つついて止まっていた足を動かしはじめた。
いつものごとく、少し後ろを一定の距離で付いて来る成瀬。
いつもの距離。
さっきのは近付きすぎた。
「付いてこないでくれる?」
「照れることはないのだよ!」
「微塵も照れてない」
結局、玄関まで付いて来た成瀬に、それを麻美さんに目撃された私は、さんざんからかわれた。
成瀬に、抱き締められた時のことを思い出す。
やっぱり、アホらしい。
近付きすぎたから
心臓がおかしくなっただけだと、
決して
トキメキなんてものではないと、
まだ少し不整脈な私の心臓に気付かないフリをして。
やっぱりアホらしい。
成瀬も、私も。