高天原異聞 ~女神の言伝~

「わお、もうできてる。すごいな」

「ご飯が蒸れるまであと十分待って。お茶碗、炊飯器の横においといたから先に食べてて。シャワー浴びてくる」

「じゃ、サラダだけ食べて待ってる」

「先に食べてていいのよ?」

「ご飯は一緒に食べたいから」

 笑ってそう言う慎也に、美咲も笑い返す。

「じゃあ、すぐに出るから」

「慌てなくていいよ」

 素早く脱衣所で部屋着を脱ぐと、美咲はシャワーのコックをひねった。
 熱いお湯が顔を濡らし、すぐに髪を洗う。
 そうしてスポンジにボディソープをつけてまず腕をこする。
 胸元に視線をやって手が止まる。
 赤い鬱血の跡がいたるところに散っている。
 慌てて鏡にシャワーのお湯をかけると、曇りのとれた鏡に映る胸元だけではなく、鎖骨のあたりや首筋にもついているのがわかる。
 顔が赤いのはシャワーのせいだけではないだろう。

「やだ、これじゃ襟付きしか着れないじゃない……」

 この跡はいつぐらいまで残るのだろうか。

 打撲の青あざも三、四日はかかる。
 明後日までに消えるとはとても思えなかったが、薄くはなるだろう。
 今週の土日が休館日で良かったと美咲は安堵した。
 気を取り直して腿の内側を洗っていると、昨日と今朝のことを思い出して、脚の付け根のさらに奥が疼いた。

「――もう」

 頭を横に振ってもう一度気持ちを切り替え、身体を流し終えると、美咲はシャワーを止めた。
 脱衣所で手早く身体を拭き、髪はドライヤーで軽く乾かし、櫛で梳かして身支度を整える。


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