高天原異聞 ~女神の言伝~
「お待たせ。ちょっと待ってね」
「うん」
脱衣所からまっすぐご飯をよそいにいく。
味噌汁は温め直さなくても十分な熱さだ。
手際よくお盆に二人分を乗せて食卓に並べた。
「いただきます」
礼儀正しく手を合わせて、慎也は箸に手をかけた。
「魚、温め直さなくてもいい?」
「そんなに冷めてないから大丈夫」
サラダだけでは足りなかったのか、あっという間におかずとご飯が減っていく。
「おかわり、いる?」
「いる。お願いします」
ご飯を多めに炊いておいてよかったと美咲は思った。
手渡すと嬉しそうに受け取る慎也が、可愛らしく見える。
勢いは衰えず、普段そんなに食べない美咲は自分の卵焼きと切り身の半分を慎也にあげた。
「そんなにお腹減ってたのなら、先に食べててもよかったのよ」
「一緒にいるのに一人で食べるのやだよ。うち、両親とも共働きで食事はほとんど一人だから。美咲さんと一緒にご飯食べれて嬉しい」
「――いつも、ご飯どうしてるの?」
「平日は親が雇った家政婦さんが俺が帰る前に作っておいてくれてる。土日はコンビニかな」
「――」
思ったよりも慎也の家庭環境が恵まれていないようで、美咲はなんだか切なくなった。