高天原異聞 ~女神の言伝~

「顔色が悪い、どうしました?」

 斉藤が心配げに聞いてくる。
 美咲ははっと、後ろを振り返る。

「だ、誰かに、追いかけられて――」

「何ですって!」

 綾は顔色を変えて美咲の背後に目をやった。

「お父さん、ここお願い」

 美咲を背後の斉藤に任せると、綾は美咲が走ってきた方向に駆けだしていった。

「あ、危ないです」

 慌てて言ったものの、すでに綾は角を曲がって見えなくなっていた。

「心配いりません。ああ見えて、娘は柔道と空手の有段者なんです。そこらの男よりずっと強いので」

「そ、そうなんですか……」

 安心したのか、膝から力が抜けて、その場に座り込んだ。



< 131 / 399 >

この作品をシェア

pagetop