高天原異聞 ~女神の言伝~
「顔色が悪い、どうしました?」
斉藤が心配げに聞いてくる。
美咲ははっと、後ろを振り返る。
「だ、誰かに、追いかけられて――」
「何ですって!」
綾は顔色を変えて美咲の背後に目をやった。
「お父さん、ここお願い」
美咲を背後の斉藤に任せると、綾は美咲が走ってきた方向に駆けだしていった。
「あ、危ないです」
慌てて言ったものの、すでに綾は角を曲がって見えなくなっていた。
「心配いりません。ああ見えて、娘は柔道と空手の有段者なんです。そこらの男よりずっと強いので」
「そ、そうなんですか……」
安心したのか、膝から力が抜けて、その場に座り込んだ。