高天原異聞 ~女神の言伝~

「――」

 慎也とキスをすると、心では駄目だと思おうとしても身体のほうが正直に反応してしまう。
 まるで、そうすることが当然のように、抵抗できない。
 大学生だったときに、酔っぱらった男友達に迫られて無理やりキスされたことはあったが、その時とは全く違う。
 多分、慎也だけだ。
 こんなにもしっくりくるのは。
 唇が触れるといつも、泣きたいほど心が震える。
 彼に触れられるために、この身体があるように、細胞全てが喜んでいるように反応してしまう。
 乱れた吐息と舌の絡まる音が密やかに漏れる。
 身体の力がすっかり抜けたところで、壁についていたはずの慎也の手が美咲の肩から鎖骨を下りて、服の上から胸の膨らみを包み込んだ。

「……あ……だめ……」

 咄嗟に漏れた声。
 それでも、慎也は手を止めない。
 キスの合間に優しく弄《まさぐ》られ身体が震える。
 美咲の吐息がいっそう乱れて、押し殺しても小さく声が漏れる。


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