高天原異聞 ~女神の言伝~

 美咲も、この学校の七不思議ならすでに聞いて知っていた。
 学校にはこの手の怪談はつきものだ。
 特別棟三階の踊り場。
 講堂。
 グラウンド手前の桜の木の下の芝生。
 職員室隣の金庫室。
 普通棟から続く体育館への渡り廊下。
 プール。
 そして、図書館の書庫。
 これら全てにいわくつきの怪談話が伴っている。
 確かに、この書庫も、古い造りだ。
 静まりかえった書庫に漂うひんやりとした空気。
 背筋がぞくぞくする。

「そんなこと言われたら、次から一人でここ来れないじゃない!」

「いいよ。ここには、俺がいつもついてくから」

 笑いながら、慎也は美咲の手を掴んで引き寄せ、抱きしめた。
 慎也は背が高いので、抱きしめられると美咲は簡単にその胸におさまってしまう。

「ちょっと、駄目、資料を探さないと」

「五分もかからずに探せるよ。だって、去年と同じだもん、その資料。山中先生は忘れてるけど、俺が探したんだよ、それ。去年も、一昨年も」

 慎也が美咲を持ち上げて、壁際の背の低い書棚の上に座らせる。

「しばらくは二人きりだ。誰にも邪魔されない」

 そうして、美咲を壁に押し付けるように身を乗り出してキスをした。




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