TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
そんなとき、後ろの方から底抜けに明るい声が聞こえた。

「よう、何の話してんだ?」

舞香の顔さえ確認できないほど暗かったけれど、すぐに誰の声か分かった。

「うわ、誰? あ、桧野?」
「一体何しに来たのよ」

言うと同時に、隣に人の気配を感じた。
桧野がわたしの隣に座ったのだ。

「何しにって、寝に」
「えっ、やめてよ。男子のとこで寝てよ」
「そんな言い方はないだろ。……仲良かったやつ、全員、いなくなっちゃったし」

声のトーンが下がり、どこか切なげな口調になる。
こんなこと言われたら、断りたくても断れない。
わたしは桧野に聞こえないように小さく溜め息をついた。
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