TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「溜めちゃ駄目だ。泣け。吐き出せよ。そんで、認めるんだ。それしか方法はねえから、な? いつまでもウジウジしてたって何も変わらないだろ」

優しくなんてしてほしくなかった。
だけどもう既に涙は溢れ、頬を伝い、床にしみをつくっていた。

「ほら、特別に俺の胸を貸してやるよ。前回の借りがあるしな。ほら、思いっきり泣け。すっきりするから」

まるで呻くように、声をおさえて、泣いた。

温かな桧野の腕や胸や手の平が、やはり舞香を思い出させた。
いつでも優しくわたしを包み込んでくれた舞香。

一度くらいはわたしを必要としてくれたかな。
わたしは舞香の役に立てたかな。

わたしはふと高屋くんの存在を思い出した。
今日の朝カーテンがひかれているのに気付き、少しだけだけど会話をした高屋くん。
改めて周りを見回してみると、高屋くんの姿はない。

「人間には、認めたくないけど認めなきゃいけないもんがあるんだよ。それを乗り越えねえと、な」

桧野が口を開いた。

そうだ。
認めなくてはいけない。
いつまでも死を引き摺っているわけにはいかない。

ミヅキのためにも、舞香のためにも、生きていこう。
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