TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
次々と起き上がってくるクラスメートは、みんな怪訝そうな顔をしていた。
大体は昨日のことを引き摺っているようだった。
中にはわたしのように昨日のことをすっかり忘れている人もいたが、すぐに周りの様子を察して思い出す。

だけど明るくお喋りをしているわたしたちを見てか、みんなの顔に笑顔が戻ってきた。
中には笑顔で雑談をしている様子も見られ、わたしはほっと胸を撫で下ろした。

そんなとき、桧野の声が体育館を木霊した。

「おい、こっち来い!」

その言葉を切っ掛けに、みんなが桧野の周りに集まった。
昨日のように、桧野の周りをぐるりと囲んで座り込む。

「いいか。昨日の杉村って奴の言葉、あれ俺らが死ぬってこと示してること分かってるよな?」

桧野は久しぶりに真面目な顔を見せて、そう言った。
その真面目っぷりが昨日の先生とダブって、わたしを悲しくさせた。

もう先生はいないんだと。
もう会えないのだと。
あの元気な声は聞けないのだと。

「だけどこれは……逃れられないって、分かるだろ? 受け止めなきゃいけないっぽい。抗ったら即死、みたいな」

桧野はふざけて銃を撃つ真似をしてみせた。
だがそれは全て現実味があって、冗談には感じられなかった。
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