TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「……ああ、でも、本当……死ぬ前にこんな幸せを味わえるなんて、嬉しいな」

その目はどこか遠くを見ていた。
遠くと言っても何かを見ているわけではなく、ただぼんやりと焦点を定めずに宙を見ていた。

わたしはそんなミヅキに必死で嘆く。
なぜかミヅキがどこかに行ってしまうような気がして、ミヅキの手をぎゅっと握る。
ミヅキが驚いたような顔をしてこちらを見た。

「絶対に死ぬなんて決められてないよ。生きる可能性はあるよ。全ては運命だけど……死ぬ前とか悲しいことは言わないで?」

ミヅキは最初驚いたようにこちらを見ているだけだったが、段々と穏やかな表情になって、やがてこくりと頷いた。
わたしはほっと胸を撫で下ろし、ゆっくりと立ち上がった。

「この四日間が過ぎたら、終わったら、一緒に遊びに行こう。カラオケに行こう。プリクラも撮りに行こう。何よりも一緒に喋ろう。喋りまくろう」

そして思い出をたくさん作ろう。
今までの分を取り返すように、たくさん、たくさん。

するとミヅキが嬉しそうにはにかんだ。
わたしはも微笑み返す。

ああ、こんな幸せがいつまで続くのだろうか。
ミヅキではないけれど、こんなことを考えてしまう。
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