LAST EDEN‐楽園のこども‐
「それは子供の理屈ですよ」


佐伯は首を横に振る。


「今から将来のことを考えておかなければ、先々選択を強いられたときに、困るのはあなた自身です」


きっぱりと言い切ったその口調は、まるで学級委員長がだらしないクラスメートを諌めるそれに似ていて、涼は思わず苦笑する。


「笑われるようなことを言った覚えはありませんが」


「だから、あたしはガキだって言ってるだろ」


皮肉を軽く流すと、涼は再び佐伯に視線を絡めて、ふっと息を漏らす。


「多分、あんたはガキのくせに物分りがよくて、誰かの決めたレールの上でも、文句一つ言わないで大人しく歩けるんだろうな」


聡い佐伯は、話をはぐらかすように曖昧な言葉を口にする涼のそれが、自分に対する静かな拒絶であることを悟る。


まるで、目には見えない仕切り線を置かれたようだった。


人種が違う人間はそこから入ってくるなと、そう言わんばかりの壁が立ち塞がっているようだった。
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