清水君の嫌いなヒト


帰り道では
少し前を歩く清水君の後姿を
冬の星が散る夜空を背景にじっと見てた


これからは盗み見る必要がなくなって
じっと見ていても許される大義名分があるのが嬉しい

私の幸せ小さいなぁー…


くふふとマフラーの中で笑みを隠す



そんな事をしてると
ぱたりと清水君が足を止めた


『…なんで隣歩かないの?』

「え…なんとなく?」


疑問形に疑問形で返す不思議な会話


『榊は僕の目の届かない所でこけてそう
ただでさえ鈍いんだから』

そう言って隣より少し前に押し出された


やっぱり、暴言も柔らかくなった…かも


「ありがと」


思わず嬉しくなって満面の笑みで返すと
顔をしかめて前を向いてしまった

私は清水君の肩ぐらいまでしか背が無いので
すっと姿勢良く立ってしまうと清水君の顔は見ることが出来ない


乱雑に手をトレンチコートに突っ込むと
今にも舌打ちをしそうな空気を醸し出して歩き出した


あ、やっぱりいつもの清水君だ


あんまり甘いのはまだ慣れない
手も繋がないこの距離感が丁度いい



でも、ちょっとやっぱり寂しいから
さりげなくコートの端をつまむくらいは許して








…なんちゃって





「(やっぱちょっと恥ずかしいなぁー
でも行った手前もう手ぇ外せないし…)」

『(無闇に“ありがとう”って言う癖直せよ
心臓に悪いし
裾掴んでるの本人ばれて無いつもりだろうけど気付いてるっつーの)』





少年はやっぱり
朗らかな彼女に翻弄される

ただ、それだけの冬のお話




END



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