Sugarless -君だけがいた時間-
「えーっ、そうなんだ、知らなかった。いつもメール送っても返事がないなあって思ってたけど」
朝子の反応に私は苦笑いして、ごめんね、とだけ言う。
だけど納得いかないような顔を彼女がするので、私は自分がどうしてメールを嫌いか、手短に説明した。
電話ならまだマシなんだよ。出るか出ないか、自分で決められるし。けどメールは、ひどく一方的で、断りもなしに私の領域に踏み込んでくるから嫌いなの。
でももっと嫌いなのは郵便物。送りつけられた手紙とかハガキを見るたび、ゾッとするんだ。できれば自分ちの郵便受けの口を、ガムテープでふさいでしまいたい。
そんな私の主張を、楓は隣で、ニコニコと微笑みながら聞いていた。
「俺も嫌いだよ。メールとか、手紙」
朝子は理解できないという表情で首をかしげている。まあ、個人の感覚の違いだしね。
そして、私の嫌いなものを嫌いと言う。そんな楓が、私は好きだ。