キミのとなり。
仁が帰国後、私と再会してしばらくは周りも気にせず堂々と付き合っていた。



でもやっぱり芸能人だし、若い女性ファンが多い事を考えるとそれはマズイと事務所から何度も話し合いの場が持たれた。



しかし私も仁も別れるつもりは全くないと言い続けているうち、事務所側も強行手段に出たのだ。



それは、二人で住むマンションを用意する代わりに二人が付き合っているということは世間には一切内緒にするという交換条件だった。


つまり、私は仁の恋人であることを一切口外してはいけないという事なのだ。


もちろん、マスコミにもばれるような事があってはならない。


仁と私は悩んだ挙句、ひとつの結論を出した。



「一緒に暮らそう。今は二人の時間を大事にしたい。」


仁は胸を張ってそう、言ってくれた。



そしてそれ以来、私は日陰の女になった。


でも、不満はない。



私の隣にはいつも仁がいるし、どんなに多忙ですれ違う日が続いても必ず仁は私の元に帰ってくるのだから。



「…ってか、私の話しはいいよ。弘人はどうなの?彼女とは。」



弘人は恥ずかしそうにポリポリと頭を掻いてこう言った。



「実はさ、」



「ん?」



ジュース片手に弘人の話しに耳を傾ける。



「プロポーズしたんだ。」


「ブハッ!ゲホゲホ……」


飲みかけたジュースを思わず吹き出してしまった。



「だっ大丈夫かよー。」



弘人はポケットからハンカチを出して私に差し出してくれた。



「ごっごめ!」



「吹き出すことないだろ。」



「だっだって、ビックリしちゃって!!プップロポーズ!?」



弘人は少し真顔で正面に目をやる。





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